遠笛

左官−挾土秀平のブログ
若い夏・浅草公会堂




2016年7月1日〜3日にかけて

【鼓童 ・若い夏】 浅草特別公演が終わった。


自分は、この3日間5回の
公演すべてを見届けたのだが

若い鼓童達は
渾身で打ち込む疲労を蓄積しながらも
公演の回を増すごとに、その内容を充実させて

3日目の最終公演は
観客の感動が場内に
充満していたことを誰もが感じ、

【若い夏】 は自然な至福をもって幕を閉じた。


鼓童との関わりは去年になる。


当初は
【若い夏】の題字を
書いていただけませんか、がはじまりだったのだが

そのうちに、
若い鼓童達に会って直接様々な話をして欲しい。
今回、鼓童が目指したい公演内容をどう思うか?
その上でこの公演の、舞台美術を手がけて欲しい

いまどき、めずらしい
ひたむきな若者達との関わりは
新鮮なぶんだけ気にかかった。


そんな流れで
是非佐渡にと誘われて、練習を終日見学する。
若い演者達と話す機会が増えて
ひとりひとりの役割や個性も見えてくる。
それぞれが抱える悩みや迷いも垣間見える。



今回、目指しているのは
【鼓童のスタイルに立ち返って新しくなる】
その舞台美術とは、
【主張ではなく、彼等の背景を作ること】だとわかってくる。


たぶん舞台を見せるのでなく、
演者と背景が見られている。
つまり風土・風景、を観る者が 連想してゆく

そういう舞台づくりなのだと
自分の役割を考えたものだった。






当初
プロデユーサーとリーダーと話していたとき
自分は二人にこんなことを言った。

鼓童の全身全霊で打ち込む大太鼓の振動を
公演のラストに、しばらく闇のなかで聞いてみたい。
それはきっと、
闇から伝わる振動が、観客一人ひとりに直接届いて
魂が浮きあがるような感覚に、包まれるのではないか?

リーダーは、
そこから逆算して公演を構成し考案し
自分もそれに沿って
高さ7m、幅14mの舞台に大太鼓と同じ大きさの月を
背景の象徴にしようと考えた。



90分の公演内容は、いわば

【朝の光に、日暮れに、月夜に、闇夜に】

【弾ける若さ、爽やかさ、まぶしさ〜静けさ、夜の深さ、強さ力技、闇 】

そんな印象を与えるものとなっていった。



しかし、自分自身に
ただ舞台美術だと、割り切れないストレスも味わった。
舞台演目の背景を作ると言うことは
様々なシーンでの照明の色、場所、強弱、角度から
それは数十枚の壁を作っているのと同じになって
その場の見え方、構図として強調と余白のメリハリなどなど
それらは、壁と照明をひとつの組み合わせとして考えているぶん
ここは、こうするべきだ、という思いが膨らんでしまう。


しかしこれは彼等の舞台なのだからと
自分を抑えることでも疲れた。


それでも尚、
こうした方が意味深くなる、美しくなる、伝わる
ここは新しいチャレンジとして試すべき、
ここは駆け引きなく真っ直ぐ
などと、想いが巡って疲れる。


若い鼓童も疲れただろうが
俺も疲れて最後に笑った。



後日談として
リーダーの前田氏は
今回を、無心に太鼓を打つ姿を
見てもらう舞台だと考えながらも

一方では、
いく度となく、舞台として物足りないのではないか
と言う不安にかられたと言う。

限られた時間の練習で
舞台内容はギリギリまで迷い、変更を繰り返した若い夏。


そんな舞台と舞台裏を最後まで見届けて。



後半の始まり、月が現れる静かな見せ場は、
言葉に変えがたく
観客の心象の深度によるので語りきれないが

中盤に
全身を躍動させて太鼓を横打ちする見せ場がある。



舞台の真ん中、
ひとりの演者が、観客に背を向けた状態で
打ち込んで行くのだが
それは津波のように徐々に激しさを増して
見る側も、思わず息を飲んで見守り
一緒に一定の体力の限界域を感じてから尚
演者は、さらに強く激しい領域で打ち続ける場面がある。


その背中は
ここで燃え尽きるように揺れ
のたうつ首が乱れ動き
まるでこの局面を乗りきれず


今にも
両ひざついて崩れるかのような、
後先のない打ち込みに
観客は演目の終わりに関係なく
その背中に惜しみない拍手を送り
演目が終わった瞬間の更なる熱い拍手は


津波のような演奏と、津波のような拍手を巻き起こした。


ここに若い夏が目指した
テクニックや美しさを超えた太鼓の力を
誰もがあらためて共感したと思う。



最後の闇の大太鼓は

月夜に、化身の如く三台の大太鼓を打ち続けて

その姿は照明によってシルエット変わり
やがてそのシルエットも闇に消えてゆく・・・・

そうして、ただ月だけが浮かんだ場内に
大太鼓がさらに強く響くと
感動の拍手が沸き

さらに月も消えた闇が
観客包み、渾身の大太鼓を打ち響かせると
歓声があがるほどの拍手が止まなかった。


それほど闇の大太鼓は魂を打つものだった。

演目の終わりではなく
その途中で沸き上がる本当の拍手の手応えを受け
闇の中で大太鼓を叩く前田、渾身の姿を想像した。


5回見て5度鳥肌が立った。

【鼓童のスタイルに立ち返って新しくなる】



こうして、
8カ月に及んだ
自分と鼓童の夏も幕を閉じた。


高さ7m、幅14mの背景を風景に
観客の想像にあずけた鼓童の若い夏。

これを完成と言うには
鼓童として、ほど遠いのであろうが・・・

【若い夏】の手応えの、
その先の進化は、想像するに喜ばしい。






















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