遠笛

左官−挾土秀平のブログ
佐渡へ 【若い夏】




夕刻、高山から富山に入って、
翌朝、上越妙高から直江津へ、そして船に乗る

佐渡は太鼓集団【鼓童】の本拠地である。




この7月に行われる
鼓童の公演【若い夏】が
浅草公会堂で予定されているなかで


いま、舞台演目の構成と練習をしているので、
その様子を見に来て欲しい、
これは若い鼓童達との約束だったこともあって
4月22日、佐渡へ向った。



練習は佐渡の廃校になった体育館で行われていた。



そこに午前中に入って夕方まで
演者の演奏を正面にして
用意された椅子に座って
浅草の舞台の彼等の背景を
考えるわけでもなく考えながら、
若い鼓童達の練習を見守ることとなった。


この公演は
スタンダードな鼓童でありながら
現在に新鮮な印象を持って貰うことを目指している。
スタンダードな鼓童を基調として
新しいスタンダードを徐々に生み出したいと願う
若い鼓童の第一歩なのだ。









実は去年から、
この想いを聞いていたから
自分自身も考えていたし、
まず一観衆として、意識して聴く

それは、
新しい依頼から
新しい塗り壁を考え
試行錯誤している時と同じ感覚になり
そこは、こうしたほうがとか、
俺ならこう見せたい、聴かせたいなど
ひとつ、ふたつと、思わず口出ししてしまうと

ハッと気づく
彼等は演者でもない俺を怪訝に思ってはいないだろうか?


しかし、

新しいとは、常にこうしたことを伴って
目的に対してブレがないのなら同じはずだ、
などと
それはひとり問答を繰り返す、結構くたびれるものだった。



いずれにしても
左官である自分が、いまここにいること事体が
大胆、不思議な事で、
こっちも向こうも、手探りで進むのは致し方ない。

不安と高揚感が入り混ざった
時間は意外に早く過ぎて、日が暮れはじめていた。



鼓童のプロデューサーが声をかけてきた。

秀平さん、近くに灯台がある
夕陽の綺麗な岬があるので行ってみませんか?



水平線に太陽が消えるまでを眺めることは
最近の念願だったから
二つ返事で向かう



岬の先端まで降り立って
ひとり夕陽に対峙した

水面に反射する
強い白金の光を受けていると

やがて、
まぶしさを超えて無心になってゆく自分がいた。
そして揺れる輝きを浴びている身体から
苦味が洗われるような心地よさを感じていた。


しばらく眺めて振り向くと
自分の背後に若い演者達が集まっていて
皆で沈む太陽を見届けた・・・・。

こうして佐渡の一日が終わった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


翌朝、
坂東玉三郎さんが現れて、緊張と驚きの中で、
あいさつの礼を尽くしたつもりだ。
玉三郎さんの演者達への発声の訓練に立ち会い
自分もその輪に加わって
指導を受けたのは、とても良い経験になった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


それから後【若い夏】の通し稽古を見る。


そもそも鼓童は太鼓と暮らすような
2年間の厳しい訓練あとの選抜が行われ、演者になれない者もいる。


そのレベルでさらに
まだ荒削りだ、不満足だ、
もっと強く、弱く、もっと考えたい
もっと演目を構成を練り直したい、
もっともっと練習したいという貪欲な謙虚がある。



通し稽古は
飛騨に来たとき彼等に話したこと、
彼等がやりたいと言ったことから
まったくブレのない、飾らぬ真っ直ぐさが演奏に貫かれていた

まさしく新しいスタンダードの第一歩を
一同、噛み締めているように思えた。



数箇所、鳥肌が立つような場面があり
佐渡の風景を、
美しく厳しい自然を感じさせる創造に
思わず、
俺ならと自分流の考えが湧いて
また口を出しそうになって飲み込んだ。



さてさて、それで俺は

浅草の奥行きのない舞台で、制約ある限られた条件で
何処まで、彼等の背景となり得ることが出来るだろうか?
責任あるスタッフにとって
今回は、自分が左官である事からの信頼の点でも、
大胆な提案は、許容できないのも理解して。


その中で
何処まで、彼等の背景となり得ることが出来るか?
時間なく手探りの中で、彼等の為のせめてもの背景とは?
また徐々に神経が立ちはじめている。


今回の若い鼓童の 3日間の公演【若い夏】は


まだ発展途上で、
不器用なのかもしれないが
心から真っ直ぐで、ドキドキして新鮮である
不安である、手慣れたところがなく必死である

そこに魂ある何かがきっと感じられるように思う。


無駄に賢く、テクニックや先読みに長けた
自信過剰の若さは、とても見るに耐えない。


少なくとも俺は、そういう若者に心打たれる。


2日目の午後4:00。

プロデューサーが、
そろそろ船の時間が近づいてきました、車で送りましょう

それで、
一言みんなに声をかけて頂けると嬉しいですという。

皆に少し話して帰路の車に乗り
次は6月、三たび佐渡へ向かう約束をした。


若い鼓童達は
演奏と踊りで、車が見えなくなるまで見送ってくれていた。



7月の公演は
華やかさや目新しさじゃなく、献身性を大切にした
成功でも失敗でもない、何かを持っている。


これが浅草公会堂、
【若い夏】の内容となる事を確信した。
























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