遠笛

左官−挾土秀平のブログ
フォルテシモ




東京渋谷、パルコ劇場にて
「影向」という舞台があった。

暗い床を一歩ずつ
踏みしめるような朗読。

膿を絞り出しているかのような踊り

影と影を縫うように通り過ぎる女性の影。


舞台は物語ではなく
切り替わってゆく場面場面に
観ている側も想像力を働かせるといった風の物で

暗がりの舞台は
鍵盤を叩く残響で幕を閉じた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その
暗がりの舞台が
閉じてゆく時の曲が
しばらく大音量で場内に流れたのだが・・・



そのピアノ音は
《軽やか》《美しい》とは違う

鍵盤を弾くというよりは、
打ち込むような音を響かせて
水面に投げ落とされた石が
深く深く沈んでゆくような


そんな響きに、
顎をあげて目を閉じると
身体がビーンと痺れるような
ハガネの秒針が震えているような感覚に陥っていた。



それはもともと
ピアノの音が好きだから引き寄せられたのか
この舞台が独特だったからか、わからない。


けれど、なにかその時
自分があらわになっていて
ただただ打たれていた。

鍵盤の一音一音に打たれるごとに
なにかが浮かびあがり
浮かんでいるものは、

果てしない背景にあって、空っぽに思えた。


そして打たれている中では
自分はあるが消えていて、
入り混ざったものが分けられて
判断したり覚悟できる領域にいるような気がしていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


それから知ったピアノのこと。

極めて弱い音色=《pp ピアニシモ》
その対極にあるのが=《ff フォルテシモ》


最近思うのは、
テクニックを磨いていくほど
伝わりにくくなっているものがあるということ。
今、震えたのは、テクニックではない。


ロシアの作曲家 ウラジミール・マルティノフ
強いフォルテシモと、弱いフォルテシモ


以来、
あの舞台で流れたピアノの響き
このフォルテシモを手に入れて聴いている


水の底から
光を見ているような感覚のなかで、
いつの間にか眠っている。






| 最近のこと〜                   職人社秀平組(独立後の自分) | 20:20 | - | - |

1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< January 2017 >>
+ CATEGORIES
+ ARCHIVES
+ LINKS
+ PROFILE
+ OTHERS
このページの先頭へ